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『ボヤージュ・オブ・タイム』映像の世界を哲学者の如く彷徨い続けるテレンス・マリック監督最新作は宇宙の始まり、生命誕生、現在までを映像で辿る壮大なスケール!マリックの脳の中を浮遊するかのような心地よさ

こんにちは。試写室情報です。『ボヤージュ・オブ・タイム』★★★半

映像表現の世界を哲学者の如く、彷徨い続けるビジュアリスト、テレンス・マリック監督最新作だ。今までに観たことのない作品という意味では、本作が映画史に遺した軌跡は大きい。だが、映画にそのような価値を見出さない人にとっては、「環境映画」になる可能性も含む。個人的には「ネイチャードキュメンタリー」を好むせいか、マリックが”視覚“と?科学”の接点となる、集大成の仕事・映像美を堪能できた。

妥協を辞さない完璧主義のマリックが十数年、温めた企画である。事実、本作の視覚効果は生半可なクオリティではない。科学や生物、地質学、天体学、もちろん哲学にも全く疎い者としては、繰り出される映像のパノラマを、マリックの脳の中を浮遊し、耳からはケイト・ブランシェットのナレーションを揺蕩うように、心地よく身を委ねるしかなかった。

ビッグバンによる宇宙の始まり、生命体の誕生、自然科学から観察した現在までの歩みを映像で辿るスケール感の大きさ。人類の未来へと探求は繋がり、マリックの脳の中で果てることはないのだろう。海中、火山、遺跡などの自然の雄大さ、生命の偉大さを詩情豊かに表現できるのは、マリックしかいないはずだ。

最近のマリック作品を観るにつけ、ライフワークとしては本作のようなスタイルが適しているのかもしれないと気付いた。デビュー作『地獄の逃避行』、個人的に最も愛す『天国の日々』、そして『シン・レッド・ライン』『ニュー・ワールド』といったドラマ作品を時系列で観続けた者としては、近年のマリックは“遠くへ行った人”になった感があった。

今後の作品展開は分からないが、他に類を観ない映画作家として、いつまでも撮り続けてほしいものである。本作が、今現在は受け入れられなくとも、再評価される時代が到来する、その日まで…。

3月10日(金)より、TOHOシネマズシャンテほか、全国で公開されます。ネイチャー系ドキュメント好きには必見の映画と言えるでしょう。