小説青空の花火25

小説家目指しています!!

浜菊はまぎくまこと

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目次

第2章シャッターチャンス

土曜日のお昼、早速すみれに報告すると、お決まりの目の輝きだった。彼女は何にでも興味が湧くのではないだろうか。好奇心旺盛だ。お昼ご飯を食べながら経緯を話し、この先どうするのか話し合いながら山本さんの家へと向かった。ちなみに梨華には、明確なことが分かるまで黙っていることにした。余計な不安など抱かせるわけにもいかないし。

すみれと意見を言い合いつつ、時足元からの主張も交えながら、賑やかな公園の傍を歩く。そして、静けさがやってくると、いつの間にかあの寂しい通りに着いていた。山本さんのご実家は写真館だと言っていたので、すぐに見つかった。創業何十年ぐらいかも分からない趣ある店構えだ。緊張しながら扉を開けると、たくさんの笑顔が出迎えてくれた。

小さな子供から、おじいさんおばあさんまでたくさんの人の笑顔が溢れている。

きっと、写真を撮った人と撮ってもらった人の信頼関係があってこそのこの笑顔だろう。一枚一枚の写真をじっくり見て回りたいという衝動に駆られたところで声がかかった。

いらっしゃい、内山さん、川島さん

店いっぱいに飾られた写真に負けないくらいの笑顔で出迎えてくれたのは、昨日再開したばかりの山本さん。

今日はお店にお邪魔させてもらってありがとう

いえいえ、あんまり人も来ないし気にしないで

若干投げやりな言い草に、待ったをかけたのは先程から大人しいすみれだった。

そんなにご自分のお店を卑下してはいけませんよ。いや別にお世辞を言っているわけではないですよ。私そういうの苦手なので。この写真館、入った時から素敵でしたよ。辺り一面の笑顔の写真。それぞれに個性もありつつ、一体感も醸し出しています。こんな写真が撮れるなんて素晴らしいです。もっと誇るべきです!!

急に走り出した犬のようだ。山本さんにめがけて想いをストレートにぶつけて、なおかつすみれ自身の身体も山本さんに近づいていっている。前のめりになりながらも熱弁するすみれに、やや、というか大分驚きながらも照れくさそうに笑顔でお礼を言っている山本さんは強者だ。

まだまだ語りたそうなすみれを何とか本題に戻して、山本さんに話を聞く。昨日聞いたこと以外に聞けることは、例の写真を持ち去った人物の特徴だ。すみれは絵が上手いし、話を聞きながら人物像を描くのも得意だ。まさに打ってつけの役だ。

すみれが絵を描く間、私は店内を見て回ることにした。そう言えば、彼女が店番をしているということは、この店の店主となる親御さんは外でお仕事されているのだろうか。そんなことを考えながら写真を見ていると、ある写真に目が留まった。家族写真だ。椅子に座ったおじいさんとおばあさんを囲むように家族が周りに並んでいる。

おばあさんの隣には小さな女の子。お孫さんだろうか。おばあさんの膝の上には三毛猫が座っている。まだ小さい子猫だ。愛らしい。それぞれの笑顔は違うけれど、家族皆から愛を感じる。こんな写真を撮れるなんて、やっぱりすごいと改めて尊敬する。そうしている内に、いつの間にか終わっていたようで、気づけばすぐ傍に二人がいた。

素敵な家族写真ですね。愛が溢れているような笑顔です

だよね、私も今そう思ってたところ

あ、それね、家の家族写真

わずかに顔を赤らめる山本さんを、すみれと二人で振り替り、声も重なる。

え、そうなの?

え、そうなんですか?

うん、随分昔のだけどね。あ、このおばあさんが、昨日言ってた、写真を見せに行く予定だったおばあちゃん。で、この隣にいるのが私ね

優しそうなおばあさんだ。写真に写っている山本さんからは、おばあさんのことが大好きという気持ちが伝わってくる。素敵な家族に生まれたんだなあ。しみじみと思った。

ああ、それで、出来上がったの?

もちろんですよ。こういうのは得意中の得意です。こちらです

すみれがスケッチブックに描いた似顔絵はどこかでみたことのある顔だった。それもつい最近見た気がする。

あれ、どこかで見たことがある気がするなあ、この子

似顔絵の女の子は、ロングヘアーを二つ結びにしている子だ。特別可愛いわけでもないけれど、地味でもない。見たことがあるにはあるのだが、思い出せない。すみれと二人であーだこーだ言いながら考えてみたけれど、結論が出ないまま解散することになった。

山本さんの家からの帰り道、とぼとぼ歩きながら考える。誰なのかは思い出せないけれど、同じ高校であることは分かった。言い方悪いけど、梨華を恨む人は、少なくはない。学校で地道に探すしかないかと肩を落としていた時、ずっと大人しかった足元からぼそりと声がした。

私知ってるよ、見たことあるあの子

え、カメリアそれって本当?

嘘つくわけないでしょ。私はずっと椿と行動を共にしてるんだから、一緒にその子に会ってる。しかも椿、その子と話したよ

まあそうか。で、私が話したことあるってどのクラスの子?

ほら、椿が昼休み教室で囲まれた時にさ、クラスメイト代表みたいな女の子いたでしょ。椿が主に話してた子。あの子だよ

カメリアの話の通り、数日前のことを振り返る。確かにそんな気がしないでもない。今まで梨華のことしか見てなかったから、クラスメイトの顔もろくに覚えてない。

でも、あの時の彼女が写真をばら撒いた張本人だとして、なぜそんなことをする必要があるのだろうか。彼女に梨華と接点があったとは思えない。梨華の傍にずっといた私が知らない子だもの。まあ、本人に聞かないことには何も分からない。それにしても、よく覚えてたなカメリア。

カメリア意外と記憶力あるんだね

からかい気味に投げかけると、返事がない。いつもならすぐさま切り返してくるのに、おかしい。もしかして、逆に私のことを脅かそうとしているのだろうか。それとも、本当に怒ったのだろうか、傷ついたのだろうか。カメリアに限ってそんなことはないと思い込んではいたが、彼女にだって感情はある。実体がないだけで何も変わらない。

ねえ、カメリア。怒っちゃった?それとも傷つけちゃった?

だんまりを決め込むカメリアが気になって、いつも以上に低姿勢で聞いてみても反応がない。急に不安が滲み出てきた。

カメリア。ねえ、カメリアってば

道のど真ん中で自分の足元を蹴りながら話す私は、傍から見たら変人だ。でもそんなことは頭に無かった。周りに人がいたかいなかったかどうかも知らない。

何度か問いかけて、やっとカメリアが反応してくれた。

ああ、ごめん。ぼーっとしてた

もう、びっくりしたじゃん。本気で怒ったのかと思った

本当は、カメリアがいなくなってしまったのではないかと思ったのだ。私を日常から非日常へと連れてきてくれた彼女はもう私にとっては無くてはならない存在だ。一瞬だけ、彼女が消えてしまう恐怖に襲われてしまった。しかし、それはカメリアには内緒だ。なんだか癪だし。

え、怒るって、椿何言ったの

別にー。何でもないよ!

聞いてなかったならそれでいい。しめたとばかりにしらを切る。ふと顔を上げると、私達以外誰もいなかった。先程一人でやっていた不審な動きを思い出して、ホッと一息吐く。

ねえ、ちょっと。気になるじゃん。教えてよ

だからもう何でもないって。それより、明後日学校で確認するからちゃんとカメリアも見ててよね

。分かったよー

釈然としていないようだったが、今回は仕方なく引き下がったようだ。何だか、ついこの前も似たようなことがあったような気がするなあと朧げな記憶を思い返しながら帰路についた。

続く

短編小説完結作品

優しい音

人生貯金の利息

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